会社分割は2種類:吸収分割と新設分割
会社の中の特定の事業を別の会社に承継させる会社分割には、主に2種類があります。
分割した後の事業を別会社に承継させる「吸収分割」か、もしくは新たに設立された会社に承継させる「新設分割」かによって分類が異なります。
吸収分割
「吸収分割」とは、会社のある事業を分割し、別の会社に承継させる方法のことです。
一部を他社が引き継ぐので、「吸収」という言葉を使っています。
吸収分割では、分割される会社を「分割会社」、事業を吸収する会社を「吸収分割承継会社」と呼びます。
新設分割
「新設分割」とは、分割した後の事業を新たに設立した会社に承継させる分割方法です。
例えば、ヘアサロンとエステサロンを経営していた企業が、事業が大きくなったエステサロンの事業を独立させて新しい会社を作るときなどに行われます。
新設分割では、分割される会社を「分割会社」、事業を継承する会社を「新設分割設立会社」と呼びます。
分割計画・契約の作成締結
会社分割をするときは、会社のどの事業と資材を分割して新会社や継承する会社に引き継ぐかを具体的に決定しなければなりません。
吸収分割をするときには、分割会社と吸収分割承継会社との間で詳細を定めた分割契約書を締結することになります。
新設分割は継承する相手企業がいないため契約書は必要ありませんが、分割計画書を作成する必要が生じてきます。
吸収分割契約書
吸収分割のための契約書作成では、主に次のようなことを決めていきます。
◎分離し、承継する事業の内容
◎吸収する企業が、事業を継承することに対して支払う対価
◎吸収する企業の資本金が増加する場合、その総額
◎契約書の効力が発生する日付
新設分割計画書
新設分割では、新設分割計画書で次のようなことを決めていきます。
◎新しく設立する会社が承継する事業の内容
◎新しく設立する会社の商号、目的(起業に関わる基本的事項)
◎設立時の取締役
◎分割の効力が発生する日付
債権者保護手続
会社分割をする会社は、会社分割する旨を官報に対して報告し、会社として認知している債権者に対しても個別に分割を行う旨を報告しなければなりません。
債権者は会社分割によって影響を受けるため、報告する事が義務付けられています。
これを「債権者保護手続き(債権者異議手続き)」といいます。
会社分割の際には継承先会社の登記が必要になりますが、登記の申請には該当の会社の分割の公告が掲載された官報が添付書類として必要になります。
この上で、債権者が異議を申立てる期間を最低1か月設けることになります。
これは法律で決まっている手続きなので、会社分割手続きにおいては、1か月以上の時間が必ずかかることになります。
吸収分割承継会社においては、必ず債権者保護手続を行う必要があるとされています。
分割会社においても原則として債権者保護手続を行う必要がありますが、条件によっては債権者保護手続が必要ない場合があります。
会社分割の登記に必要な書類
こちらでは、分割会社の登記で必要な書類をご紹介します。
場合により、一部必要書類が異なる場合がございますので、詳しくはご相談ください。
吸収分割の場合
◎吸収分割契約書
◎株主総会議事録(分割会社)
◎株主総会議事録(承継会社)
◎分割公告が掲載された官報
◎催告先一覧(債権者一覧)(分割会社)
◎催告先一覧(債権者一覧)(承継会社)
◎印鑑証明書(分割会社)
新設分割の場合
◎新設分割計画書
◎定款(設立会社)
◎株主総会議事録(分割会社)
◎分割公告が掲載された官報
◎催告先一覧(債権者一覧)(分割会社)
◎設立時取締役の印鑑証明書(設立会社)
会社分割の流れ
会社分割の手続きは次のようなスケジュールに従って行なわれます。
最短を目指す場合でも、分割の効力発生日のおおむね2か月前に手続に取りかかる必要があります。
ただし、株主総会の招集手続が省略または短縮できない株式会社においては、更に長期間かかる場合があります。
1.分割契約または分割計画の締結・作成
分割期日の約2か月前を目安とし、分割の詳細を決定します。
2.株主総会での承認決議
株式会社の場合、株主総会での承認が必要です。
制度上、分割の効力発生日の前日までに行うことになっています。
実際には、その他の手続きを円滑にするためにも分割期日の約1か月半前をめどに行います。
3.債権者保護手続き
こちらの手続きは2週間程度要するため、全体では「2.株主総会での承認決議」と同時進行で実施します。
4.効力発生日
債権者保護手続きの期間中に異議の申し立てがなければ、契約書や計画書で定めた分割期日に分割が行われます。
5.登記申請
分割期日を超えると、会社分割が完了します。
会社に関する情報を法務局に登録する登記を申請します。
6.完了後書類の提出
完了後の書類をお渡しいたします。
登記の手続きは、申請後約1週間~10日で完了します。
登録免許税
会社分割の登記に際して、「登録免許税」が発生します。
それぞれ次のとおりです。
吸収分割承継会社の登録免許税
◆会社分割により資本金の額が変化しない場合
3万円(定額)
◆会社分割により資本額が増加する場合
増加した資本金の額 × 1000分の7※
※この額が3万円に満たない場合登録免許税は3万円
新設分割設立会社の登録免許税
◆新設分割設立会社
資本金の額×1000分の7※
※この額が3万円に満たない場合登録免許税は3万円
◆分割会社
3万円(定額)